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読切! 英単語帳の彼(高校生ピュア恋愛) 1話完結 オリジナル小説トーナメント準優勝

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「1人? 良かったらお茶しない?」

 いつもなら顔も上げず、無視して通り過ぎるところだが、友達との待ち合わせ場所まで来てドタキャンのメールを受け取り、むしゃくしゃしていた希美(のぞみ)は、なんとなく相手の顔を見上げた。そして――驚いた。

 声をかけてきた相手は、毎朝の通学電車で希美と同じ車両に乗っている別の高校の生徒だった。

 電車の中の彼は、有名進学校の制服を着て、いつも熱心に英語の単語帳を読んでいた。眼鏡をかけ、知的な印象を抱いていたので、休日にこんな街中でナンパするような人だったとは意外だった。

「――いいよ」
「良かった! どこか行きたい店、ある?」

 眼鏡の彼はにっこり笑って希美に訊いた。笑うと知的な印象から優しげなイメージに変わる。

「じゃあ、あっちのビルに入ってるカフェでもいい?」

 小洒落た雰囲気がお気に入りの希美の行きつけのカフェだった。

「いいよ。場所分からないから、連れて行ってくれる?」
「うん。こっち」

 一緒に歩きながら眼鏡の彼が訊いた。

「名前、なんて言うの?」
「のぞみ。あなたは?」
「俺は拓哉。キムタクと同じ字で拓哉」

 希美は思わず吹き出した。悪いが、キムタクとは全然イメージが違う。

「のぞみちゃん、高校生? 何年生?」
「私は高1。拓哉くんは?」
「あ、一緒だ。俺も高1」

 カフェに着き、ケーキセットを2つ注文した。

「拓哉くんは、よくこうやって女の子誘ってるの?」
「違うよ。今日が初めて。のぞみちゃん可愛かったから思い切って声かけてみた」
「またまた~」

 ありきたりな口説き文句に希美が笑う。進学校の男子でもそういうことするんだ。

「いや、本当に。マジで。めっちゃ緊張した」
「じゃあ、なんで、一人であんな駅前にいたの?」
「それは…本当はちょっと用事があって」

 そう言われてみれば、拓哉は重そうなバッグを持っていた。

「用事、いいの?」
「うん。今日はいいや」

 カフェでの会話ははずんだ。結構…拓哉と一緒に過ごすのは楽しいかもしれない。
 カフェでケーキセット2人分の料金を拓哉が支払ってくれて、ビルから出た。

「おい、拓哉じゃん!」

 拓哉が驚いて振り返る。合わせて希美も振り返った。同い年くらいの男子だった。

「なんだよ、拓哉。珍しく今日は塾休んでると思ったらデートかよ」
「いや……その、これは……」

 拓哉が決まりが悪そうに口ごもる。
 確かにここの駅前には有名進学塾がある。重そうなバッグの中身は塾のテキストやノート類だったのか。

「彼女と遊んでて、模試の順位、落ちないように気をつけろよ」

 そう言ってその男子は拓哉の背中をポンッと叩いて去っていった。

「拓哉くん、塾に行く途中だったんだ…」
「うん、まあ、そう…」
「高1から日曜日も塾なんて、すごいね」
「いや、親がうるさいから…」
「なんか、ごめんね、塾休ませちゃって」
「いや! 俺の方から声をかけたから!」

 今までの楽しかった時間が、なんとなく重苦しくなってきたように希美は感じた。

「じゃあ、私、そろそろ帰るね。ケーキセット、ごちそうさま。ありがとう!」
「待って!」

 駅に向かおうとした希美の腕を拓哉が掴んだ。

「明日もまた会えるかな…。いつもの電車で」

 希美が驚いて拓哉を見上げた。

「気づいてただろ?」
「拓哉くんも知ってて声かけたんだ…」
「電車でいつものぞみちゃん見てた。単語帳読むフリして。今日見かけて、声かけなきゃと思って声かけた」

 単語帳。あれは英単語を覚えてたんじゃなかったんだ。ちょっと可笑しかった。

「じゃあ、明日も声かけて。単語帳見てないで」
「分かった!」

 駅まで送ってもらい、手を振って別れた。なんとなく明日学校へ行くのが楽しみだった。



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作者より 
懲りずに、トーナメント参加用書き下ろし。
ここには載せませんが、実は続きもあります。

追記!「第6回オリジナル小説書いたよブログトーナメント」にて
準優勝になりました!
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~ Comment ~

かわいい!

なんだか光景が浮かびそうな文章ですね。

流れがしっかり出来ています。

会話が自然かつ、読者を引き込みます。

そして、『共感』を呼び起こす物語ですね。

英単語を読むふりして、本当はのぞみちゃんのことを気にかけていたんですね。

かわいいなあ。

キレイです。

愛まで行かない、青い思い。

素敵に描かれていると思います(^^)


幸田様

ありがとうございます!
>なんだか光景が浮かびそうな
とおっしゃっていただいて嬉しいです。

そうそう、まだ青い思い…。

なんですが、このショートショートを元に
現在、原稿用紙133枚超(今のところ未完)の小説を書いています。

タイトルも

こんばんは!
タイトルも読みたくなるような
タイトルで内容も今風の感じで
またワクワクします
続き 読みたいです

雨宮様

ありがとうございます!

続き、長いんですよ…。
原稿用紙100枚分以上…。

ノスタルジー

歳を重ねていくとノスタルジーにてんで弱くなります。

こうしたさりげない日常のときめき、ああ昔に戻ってみたい(笑)

僕もハートウォームな話が好きです。

尾道貴志様

いいですよねー。
こういうときめき…。

今日の夜、大きな駅(ターミナル駅)の改札前で
名残惜しそうに、手を繋いだまま離れられないカップルがいました。

ああ。
私もここで同じことをしてたな…。
遠い昔の話です…。

NoTitle

こんにちは〜

ピュアな感じが良いですね。
明日、電車でどんな話をするんでしょうね。

勘太様

こんにちは。
毎朝面倒な登校ですが
明日は電車で会えると思うと楽しみですね。

実は、ちょっと改変していますが
これの続きもあるんです。
長くなるので載せていませんが(笑)

NoTitle

こんにちは。
さっそく遊びに来てしまいました。

まずは短編からと思い、いきなり素敵な物語に出会えました。

心がふわっと温かくなるようなお話ですね。そして、きゅんきゅんしました。この2人を近くで見ていたいです。

ほかの物語もゆっくり大事に読んでいきます。リンク貼らせていただきます。今後もどうぞよろしくお願いいたします。

吉川蒼様

ご訪問&コメントをどうもありがとうございます!

いろいろ褒め言葉を頂いてしまって
嬉しいやら恐れ多いやら…。

また、お暇なときにでもゆっくりしていってください。

ありがとうございました!

NoTitle

高校1年生の初々しい様子がよく伝わって、読んでいて胸がキュンとしました^^*
ただ好き♪
それを伝えることが自分にとってどんなに大事だったか。
思い起こしてくれた作品でした^^*

hilo様

胸キュンを書きたかったので、そう言っていただけると嬉しいです。ヾ(*´∀`*)ノ

ただ好き♪

このコメントにGARNTE CROW(解散しましたが)の「忘れ咲き」という歌詞を思い出しました。

>愛だとか恋だなんて変わりゆくものじゃなく
>ただ君を好き そんな風にずっとね 思ってるような

忘れていたそんな気持ちを私の方こそ思い出させてくれたコメントでした。

ご訪問&コメントを本当にどうもありがとうございました!

やっぱり。

おはようございます。やっぱり、Sha-Laさんが書かれるお話は可愛いのが多いです。
トーナメントで準優勝されたんですね。
素敵なお話なので解ります(^-^)
この2人は段々、親密な関係になっていくのかなあと想像もしちゃいます♪

愛理様

こんにちは。
いつも温かいコメントをありがとうございます♪
この話は長いんですが完結しているので、
別館のブログに載せることも考えています^^
そのときは是非またお読みいただけるととても嬉しいです。

コメントありがとうございました!
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