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読切! 水浴びをする乙女(童話風・異国恋愛ファンタジー) 1話完結

 ←2013/9/29 「5分で読める自作短編小説ブログトーナメント」3位 →美理衣&ルーゼン 第7章 ルーゼンの嫉妬 1
 太陽の光がキラキラと反射する美しい小池。それは森の中にひっそりとある。
 国民は貧困にあえぎ、隣国はこの国を攻めようとする何かと揉め事の多いこの国で、そこはシャルモン王子が唯一心安らぐ場所であった。
 今日もシャルモンは馬に乗り、池のほとりを供も連れずに一人で散策していた。すると、池から水の跳ねる音が聞こえてきた。
 シャルモンは馬から降り、木陰からそっと池を覗き見ると、一人の娘が無防備にも全裸で水浴びをしているのが見えた。
 その娘のあまりの美しさにシャルモンは息を飲んだ。
 長く金色に輝く髪、この世のものとは思えないほど端正な横顔に、美しい曲線を描いた清らかな肢体。
 娘は楽しそうに水浴びをしている。その姿はまるで水の中を自由に泳ぐ人魚のようでもあった。
 シャルモンはしばらくその娘の美しい姿に魅入っていたが、もっと近くで見たいと思い一歩足を踏み出した。
 パキッ。
 足元の小枝を踏みつけたらしい。その音に娘は驚いた表情で振り返った。
 一瞬、時が止まったかのようだった。シャルモンと娘は身動き一つできず、しばらく見つめ合った。
 我に返ったのは娘の方が先だった。娘は胸元を手で覆い隠して後ろを向き、池の向こう岸へ泳ごうとした。

「待て!」

 咄嗟に叫んだシャルモンの言葉に、娘はビクッとして動きを止めた。

「俺はこの国の第一王子シャルモンだ。娘よ、こちらへ来い。王子である俺の命令だ」

 娘は全裸の背中をこちらに向けたまま動こうとしなかった。怖がらせてしまったのか。

「突然声をかけて悪かった。お前と話をしたかっただけだ。俺は後ろを向いているから、岸に上がって服を着ろ」

 そう言ってシャルモンは後ろを向いた。しばらくして、水音が近づいてくるのが聞こえた。そして、岸辺に脱ぎ捨ててあった白いドレスを着る気配がした。

「……着替えました、シャルモン王子様」

 その声にシャルモンは振り返り、驚いた。水浴びをしているときは金髪だと思っていたが、娘の髪は美しい艶のある黒髪だった。光の加減で金色に見えたのだろうか。
 だがその黒髪は、娘の美しさを決して損なわなかった。

「名は何と言う? この近くで家族と住んでいるのか?」
「フェールと申します。……家族はもうおりません」

 フェールと名乗った娘はうつむき加減に答えた。

「では、城へ行こう。何不自由ない暮らしをさせてやる」

 シャルモンはフェールを馬に乗せて城へ戻った。


 城に住むようになったフェールは大人しく慎ましやかで、シャルモンに従順だった。その様子がシャルモンのフェールへの恋心を一層高まらせた。

「フェール。俺と結婚してくれ」

 だが、フェールはその命令には決して承諾しなかった。

「フェール。お前は俺のことが嫌いなのか?」
「いいえ! シャルモン様をお慕いしているからこそ結婚できないのです」
「それはどういうことだ?」

 問い詰めても、フェールは悲しそうにうつむいたまま何も答えようとしなかった。



 ある夜、シャルモンはフェールの寝室に忍び込んだ。

「シャルモン様……! お止めください!」

 必死に抵抗するフェールを組み敷き、シャルモンはフェールにキスをした。

「フェール。俺は本気でお前を愛している」
「私は罪深い女です。私と交われば、シャルモン様まで不幸が訪れます!」
「構わない。お前と一緒ならたとえ地獄に落ちようとも」

 シャルモンはそれでも抵抗し続けるフェールを無理やり抱いた。



 シャルモンとフェールは結婚し、後にシャルモンは王となりフェールはその妃となった。
 シャルモンが国を治めている間、農作物は豊富に取れ、金銀銅などの鉱山も新たに発掘され国は潤い、そのおかげで強い軍事力を持つことができたため、隣国も攻めてこようとはしなかった。

「不幸が訪れるどころか、お前と結婚してから幸せなことばかりだ。フェール、お前は幸運を運んでくる天使のようだな」

 シャルモンはフェールにキスをした。だが、フェールは浮かない顔だった。

「どうした。お前は俺と結婚して幸せではなかったのか?」
「……シャルモン様。お話しておかないといけないことがあります」

 意を決したようにフェールはシャルモンを見上げた。

「私は実は天界に住む天使だったのです。シャルモン様と出会った時、私はこの世界へ降りて水浴びを楽しんでおりました。本当は人間には見つかってはいけなかった。いえ、見つかってもすぐに神の住む天界へ戻らなくてはいけなかった。それが神のご命令でした」

 驚きのあまり言葉が出ないシャルモンにフェールは続けた。

「でも、私はひと目でシャルモン様に恋に落ちました。私は神のご命令ではなく、シャルモン様のご命令を選んでしまいました。神よりも、神の創造物である人間を選ぶ。その時点で私は堕天使となり、天使の証である金色の髪を失いました」

 シャルモンは水浴びをしているフェールを見た時、長く美しい金髪だと思ったのを思い出した。だが、陸に上がって服を着たフェールは黒髪だった。
 フェールはさらに続けた。

「堕天使となっても、天使の力は残っております。この国を豊かにし、シャルモン様を幸せにさせる力は。でもシャルモン様の幸せは続きません。堕天使となった私と交わったシャルモン様は、死後、地獄へ落とされます。……永遠に続く地獄へ」
「そんな……まさか……」

 フェールはうつむき、その拍子に涙がポツリと落ちた。

「申し訳ありません。私がシャルモン様に心惹かれたばかりに……」

 シャルモンはフェールの涙を拭い、フェールを強く抱きしめた。

「俺は言ったはずだ。お前と一緒ならたとえ地獄に落ちようとも構わないと。お前を手に入れ、この国を豊かにできたなら、俺はもう男として国王として十分満足だ。フェール、愛している。俺が地獄へ落ちても側にいてくれ」
「はい。永遠にお側におります」

 フェールもシャルモンを抱きしめ返した。


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作者より

アンデルセン童話(人魚姫とか)みたいなのを書きたかったんですが
堕天使とか地獄とかちょっと違ってしまいました…。
ラストで悩みましたが、まあハッピーエンドっぽい感じ?
今、書きたてホヤホヤで、気に入ったので、即アップしてみました(笑)
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~ Comment ~

NoTitle

切ないですね><
悲しい恋の話は、読むのは苦手だけれど
書くのは好きなんですよね、私(笑)

恋は盲目って言いますよね。そのお陰で幸せを感じることができるんでしょうね。他人から見たら、哀れで気の毒と思われるような恋であっても、当人はきっと幸せなんでしょう。
なんだか考えさせられてしまいました。
書きたてホヤホヤ、楽しく頂きました!笑

デジャヴ様

おおお!
書きたてホヤホヤ、アップしたばかりの作品に
拍手&コメントありがとうございました!

ラスト、王に「お前のせいで俺は地獄へ落ちることになるのか!」と
責めさせるバージョンも考えてたんですが←シャルモン鬼w
きっとこの二人は地獄に落ちても、二人の愛は変わらず、
永遠に幸せなんだと思います。
という希望を残して終わってみました。

早速お読みいただいてありがとうございました!
嬉しいですヽ(*´∀`)ノ

NoTitle

まさかの結末!鶴の恩返し的に消えていなくなってしまうか、実は男パターンかと思いました(笑)
ラブラブでなんだか羨ましいです(笑)アツアツなら地獄までも一緒に行ってOKなんですね。ええのお…そういう関係(遠い目

あ、こちらもリンク貼らせてくださいな♪といっても先に貼ってしまったんですが(^_^;)よろしかったでしょうか??

たおる様

こんにちは。コメントありがとうございました!
実は男パターン…。それは思いつきもしませんでした(笑)
もう一つ考えたパターンは、フェールが堕天使だと知り、
「騙したのか!この女を殺せ」と王が怒り、
フェールを殺したがために王も地獄へってパターン…
ですが、、ハッピーエンド(現世では)で終わらせました♪

リンク、大歓迎です!
ありがとうございます。

NoTitle

。。。覚悟は必要だと思いますけどね。
恋はともかくとして、愛を育むのであれば。
計画も策略も人生も賭けるのが恋であり、愛であると思っているので。そういった意味ではこの道は正しいものだと思います。

LandM様

そうですね。
「愛」には覚悟が必要だと思います。
ただ、シャルモンは死後自分が地獄に落ちるとは思ってもいなかっただろうし、
フェールは愛するシャルモンを地獄に落としたくなくて
抵抗したんだと思います。

NoTitle

シャルモンは死後、地獄に堕ちた。
しかしフェールは一緒に地獄に落ちて来なかった。
フェールはシャルモンの死後、隣国の若き王子と結婚して幸せに暮らしました。
めでたし。めでたし。

え?
勝手に話を作るなって?
ごめんなさいです。( ̄^ ̄)ゞ

勘太様

ちょっとそれはシャルモンが可愛そうです(´;ω;`)

NoTitle

はじめまして。
コメントありがとうございました。

挨拶代わりに読みに来て見たんですが、すごく良かったです。
お互いに地獄へ行く覚悟で愛し合う…
人間と天使の切ない恋にグッときました!

堕天すると髪の色が変わってしまうという設定もイイ

アレン様

こんにちは。初めまして。
こちらこそ、拙作を拝読していただき、コメントまで
どうもありがとうございました!

実はバレンタインのも拝読したのですが、
本編のキャラクターのようなので、
今度はまた本編から拝読させていただきたいと思います。

本来は許されないはずだった、切ない恋ですね…。
フェールもシャルモンを地獄行きにさせてしまって辛いでしょうが、
シャルモンはそれを聞いてもフェールへの気持ちを変えなかったという点を汲んで、神様は地獄行きをやめさせてくれたらいいですね。

堕天で髪の色が変わるというのは、なんで思いついたんだろう…。
なぜか、そういうイメージで書きました(笑)

コメント本当にありがとうございました!

NoTitle

ピュアで幻想的な世界に、引き込まれました。
シャルモン王子がフェールに言った
「お前と一緒ならたとえ地獄に落ちようとも」という言葉は
ラストまで読んだとき、なんて核心を突いた愛の告白だったことかと驚かされ、
またそれを聞いたときのフェールがどれほど嬉しかったかを思うと
胸がいっぱいになったのでした。
素敵なストーリーをありがとうございました。

trinity様

こんにちは。コメントありがとうございました。
シャルモンの強い言葉やフェールの気持ちまで
考えてくださって、
とても嬉しいです。作者冥利に尽きます。

こちらこそ、お読みいただき&感想までありがとうございました!
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