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「★短編集11~30話までの作品(完結)」
孤独なマジシャン 現代ファンタジー (全28話完結)

孤独なマジシャン 第1話 「箱の中」

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 月曜日の夜。今日の仕事は終わったものの、まだ一週間は始まったばかりだ。
 退屈。憂鬱。つまらない。無感情で無表情で一言も口を開かなくてもできる私の仕事。
 明日、私の代わりに人形が出勤していたところで、誰も気づかないだろう。私の価値なんて、所詮はその程度。

 交差点を渡るとまばらな拍手が聞こえた。音の聞こえた方を見ると、何やら路上パフォーマンスをやっているらしい。
 マジシャン気取りなのか、黒いスーツに黒く大きなマント。白い手袋にネクタイは真紅だった。黒いシルクハットを深くかぶっているので顔や年齢はよく分からない。

 そんなに人は集まっていなかった。10数人くらいか。私もなんとなく一番手前の端っこで足を止めた。
 マジシャンらしきその路上パフォーマーは、ポケットからネクタイと同じ色の真紅のハンカチを出し、裏にも表にも仕掛けがないことを観客に見せるとそのハンカチを片手の中に丸めた。するとその中から真紅のバラの造花が出てきた。観客から拍手がわく。

 くだらない。どこででも見る基本の手品だ。
 路上パフォーマーはそのバラを正面にいた観客の女性にうやうやしく差し出した。女性は嬉しそうに受け取り、また観客から拍手が起きたが、私は拍手する気にもなれなかった。
 感激や感動なんて言葉、社会に出て数年経ち、もうとっくに忘れてしまった。

 次はパントマイムだった。目の前に壁があるかのように、何もない空間に触れ、それを叩く。
 決して下手ではなかったが、月曜の夜からそんなことに時間をかける気は私にはなかった。一人暮らしなので、これから帰って夕食の支度もある。私はそのまま立ち去ろうとした。すると、その時、路上パフォーマーの前の見えない壁が割れた……ように見えた。
 彼は割れた壁から出てきて、白い手袋の手で私の手首を掴んだ。

「え……!? ちょっと、何……!?」

 彼はもう片方の手の人差し指を自分の口元に当てて、口に封をする仕草をした。そして少し微笑んだ。黙れということか。面倒なことには巻き込まれたくなかったが、彼は強い力で強引に私を観客の前に引き出し、自分の右隣に私を立たせた。10数人の観客の目が私に集まり、私は緊張して顔が赤くなったのを感じた。
 彼は口元だけ微笑みを浮かべたまま、パントマイムで私の四方を固めるように壁を作る仕草をした。
 私の前後左右に壁を作った彼は、コンコン、とその壁をノックする仕草をした。

 私がそれを見ていると、彼は微笑んで、再びコンコンとノックをする仕草をしてから、右手のひらを上に私に差し出すようにして軽く頷いた。私にも同じ仕草をしろということだろうか。
 くだらない。そう思いながらも10数人の観客が見守る中、私は壁をノックするフリをした。――ノックするフリをしたつもりだった。だが、私の軽く握った手は見えない壁に2度ぶつかった。

 まさか。壁なんてあるはずがない。私は恐る恐る隣の路上パフォーマーに手を伸ばした。私の手は彼の肩に触れるはずだった。だが、見えない壁が私の指にぶつかり、それを阻んだ。
 そんな馬鹿な。私は両手で何もないはずの空間に触れた。何もあるはずがない。だがそこには見えない壁があった。壁は私と路上パフォーマーとの間だけではなかった。正面も右も後ろも。私は見えない壁に囲まれていた。

 観客の拍手喝采の音が聞こえた。パントマイムだと思われているのだろうか。冗談じゃない。

「ここから出して!」

 大声で叫んだはずの自分の声はなぜか聞こえなかった。拍手の音だけが耳に響く。
 路上パフォーマーは観客に軽く一礼してから、私を見てフッと笑った。その笑みに私は恐怖を覚え、思わず後ずさりした。あるはずのない壁が背中にぶつかる。
 彼はバサッと大きなマントを翻し、それを私に被せた。私の視界は突然真っ暗になり、何も見えなくなった。

「きゃあっ!」

 急に地面が揺れて、私は壁にひっくり返った。……違う、壁じゃない。これは箱だ。私は箱の中に入れられている。真っ暗な箱の中に。そう気づいた時には私は意識を手放していた。



 気がつくと、私は見知らぬところにいた。ここはどこだろう……。とても広い……。はるか向こうに大きな扉が見えた。とにかく外へ出なければ。歩き出そうとして、私はまだ透明の壁……いや、箱の中にいることに気づいた。
 周囲を見渡して驚いた。巨大な本、巨大な万年筆、巨大なコップ……。どうやら、私は巨大な机の上に乗せられているようだ。

「気がつきましたか、三枝桃花さん」

 自分の名を呼ぶ声に驚いて振り返った。さっきの路上パフォーマーだった。ただ、彼は巨人化していた。――違う。私の体が小さくなっている!?
 彼は黒いシルクハットを取った。初めてその素顔を見た。私と同世代……20代前半のように見えた。端正だがどこか冷たさを感じさせる顔だった。
 彼は白い手袋を脱いだ。そして、透明な箱ごと私を持ち上げ、自分の手のひらに乗せた。

「何を……!」
「あなたがあまりにも退屈そうに見えたので、退屈とは無縁の世界へ連れてきて差し上げたのですよ。ああ、会社なら大丈夫です。明日からあなたの代わりの人形を出勤させますから」




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一応、コメント1件もしくは拍手2つ以上が付いたら、
「読んでもらったもの」と判断して続きをアップします。
なので拍手でいいので、拍手下さい(笑)

作者より

新連載です。と言いつつ、ほぼ再掲に近い形ですが…。
お暇な方は、単発カテゴリの中の「箱の中」との違いを探してみましょう。
あんまり変わっていません(笑)

この作品は1話あたりが長いです。
また、各回に毎回異なる副題が付いています。
これを考えるのが面倒で面倒で…。←とにかくタイトルを付けるのが苦手
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