大人の童話シリーズ (基本1話読切)
大人のための「みにくいアヒルの子」(1話完結)
私には両親がいない。
孤児院の施設の門の前に捨てられていたのを施設長さんが見つけて、育ててくれている。
一枚の手紙が残されていたそうだ。
「諸事情があり、娘を育てることができません。この子の名前は愛流(あいる)です。勝手なのは承知しておりますが、どうか大切に育ててあげてください」
私は他の子どもとは異質な顔つきだった。
大きすぎる目、異様な鼻、分厚い唇……。
特に、この唇から、私は愛流ではなく「アヒル」と呼ばれ、いじめられていた。
「みにくいアヒルが来たぞ! 近寄ったらみにくいのが感染るぞ! 逃げろ!」
私が中学生になった時、体育館裏で同じ中学の3年の男子数人に取り囲まれた。
「こいつか。みにくいアヒルとかいう奴は」
「だが、スタイルはいいぞ。胸もでかい」
「顔を隠してしまえば、醜いのなど関係ないさ」
私は突然紙袋を頭からかぶされ、体育倉庫のマットに押し倒された。
「やめてっ!」
紙袋越しに私は必死に叫んだ。
「あー? アヒルがなんか言ってるぜ」
「俺たち、アヒル語なんて知らないよな」
制服のリボンが解かれたのが分かった。ブラウスのボタンを引きちぎるかのような勢いで外していく。
「アヒルのくせに、なかなかいい体してんじゃねーか」
下着の上から胸を鷲掴みにされるのが分かり、私は涙が溢れ出た。
そして、また別の手がスカートの中をまさぐる。
「いやーーーーーーっ!」
その声を聞きつけた教員が通りかかった。
「お前ら! 何をしてる!」
「マズイ! ズラかるぞ!」
男子生徒たちは逃げ出し、私は起き上がってかぶせられていた髪袋を取った。
ブラウスははだかれ、スカートもめくられて下着が膝まで下ろされ、散々な状態だった。
「ああ、なんだ、お前だったのか。気をつけて帰れよ」
教員はそれだけ言って去っていってしまった。
ある日、孤児院に有名歌手が慰問でやってくることになった。
子役の頃から人気者のその歌手は、今26歳で、歌手としても、女優としても、CMにもドラマにも引っ張りだこの人気アイドルだった。
施設の外からも彼女をひと目見ようと窓の外には人が集まり、スマホを持って写真撮影の準備をしていた。
私は特にその歌手には興味がなかった。だが、施設のイベントは必ず出席しなければいけない。
テレビでお馴染みの歌手だったが、実物を近くで見るともっと美しく可愛らしかった。私がこのように美人に生まれたら、全然違う人生を歩んでいただろう。
ヒット曲を数曲歌い、施設の子どもたち全員にサイン色紙を渡し、慰問は終わった。
その後、私は施設長の部屋に呼ばれた。施設長の部屋にはさっきの歌手とマネージャーらしき人がまだ残っていた。
「あなたが、愛流……?」
「そうですけど……」
どうして私の名前を知っているんだろう。施設の子どもの名前を全員覚えたのか。
「愛流、ごめんなさい。私があなたの母親なのよ」
愕然とした。今さら母を名乗る女性に出会えるとは思ってもみなかった。しかもまだ26歳のアイドルだ。
「あなたを生んだのは、私が14歳の時。当時極秘で付き合っていた大物タレントとの一夜の出来事だったの」
母が名を挙げたのは、今の時代でも根強い人気を誇るアーティストだった。
「彼には棄てられ、私は一人でどうしていいのか分からず……。愛流、あなたをここに置き去りにしてしまった。お願い。許して。これからは一緒に生きていきましょう」
そう言って母は私を抱きしめた。
「私はあなたの娘じゃない……。だって私はこんなに醜いんだもの」
「醜い? 愛琉が? あなたは私の子供時代とそっくりよ。私の母……あなたのおばあちゃんは外国人なの。お婆ちゃんによく似た大きな瞳や日本人離れした高い鼻。そしてふっくらとした唇とスラリとした手足やスタイル……」
母に引き取られた私は、母の勧めでボイストレーニングのレッスンを受けながら芸能界デビューをした。
メイクなどしたことなかったが、プロのメイクさんに丁寧に細かいところまでメイクしてもらうと、自分とは思えない美少女が鏡に映っていた。
「やっぱり外国人の血を引いている子は、メイクのやり甲斐があるわ。とても綺麗よ愛流ちゃん」
今日は初の音楽番組だ。観覧客も入っている。
緊張しながら、舞台に上がると、あちこちから声が上がった。「かわいいー!」と。
私はみにくいアヒルから、白鳥になれた。
ランキング参加中です。応援クリック頂けると嬉しいです。
にほんブログ村
にほんブログ村
一応、コメント1件もしくは拍手2つ以上が付いたら、
「読んでもらったもの」と判断して更新します。
なので拍手でいいので、拍手下さい(笑)
作者より
エロいのばかりでなく、いい話も書いてみました。
以前の職場(学習塾)の人でとても「濃い顔」の男性がいたのですが
中高生は「かっこいい~」とファンクラブまで作ってましたが
小学生は「キモイ」と言っていたことから
「日本人離れした顔を子どもはどう思うか」書いてみました。
ところで、このシリーズ、人気があるのかどうかイマイチ分からないんですよね…。
孤児院の施設の門の前に捨てられていたのを施設長さんが見つけて、育ててくれている。
一枚の手紙が残されていたそうだ。
「諸事情があり、娘を育てることができません。この子の名前は愛流(あいる)です。勝手なのは承知しておりますが、どうか大切に育ててあげてください」
私は他の子どもとは異質な顔つきだった。
大きすぎる目、異様な鼻、分厚い唇……。
特に、この唇から、私は愛流ではなく「アヒル」と呼ばれ、いじめられていた。
「みにくいアヒルが来たぞ! 近寄ったらみにくいのが感染るぞ! 逃げろ!」
私が中学生になった時、体育館裏で同じ中学の3年の男子数人に取り囲まれた。
「こいつか。みにくいアヒルとかいう奴は」
「だが、スタイルはいいぞ。胸もでかい」
「顔を隠してしまえば、醜いのなど関係ないさ」
私は突然紙袋を頭からかぶされ、体育倉庫のマットに押し倒された。
「やめてっ!」
紙袋越しに私は必死に叫んだ。
「あー? アヒルがなんか言ってるぜ」
「俺たち、アヒル語なんて知らないよな」
制服のリボンが解かれたのが分かった。ブラウスのボタンを引きちぎるかのような勢いで外していく。
「アヒルのくせに、なかなかいい体してんじゃねーか」
下着の上から胸を鷲掴みにされるのが分かり、私は涙が溢れ出た。
そして、また別の手がスカートの中をまさぐる。
「いやーーーーーーっ!」
その声を聞きつけた教員が通りかかった。
「お前ら! 何をしてる!」
「マズイ! ズラかるぞ!」
男子生徒たちは逃げ出し、私は起き上がってかぶせられていた髪袋を取った。
ブラウスははだかれ、スカートもめくられて下着が膝まで下ろされ、散々な状態だった。
「ああ、なんだ、お前だったのか。気をつけて帰れよ」
教員はそれだけ言って去っていってしまった。
ある日、孤児院に有名歌手が慰問でやってくることになった。
子役の頃から人気者のその歌手は、今26歳で、歌手としても、女優としても、CMにもドラマにも引っ張りだこの人気アイドルだった。
施設の外からも彼女をひと目見ようと窓の外には人が集まり、スマホを持って写真撮影の準備をしていた。
私は特にその歌手には興味がなかった。だが、施設のイベントは必ず出席しなければいけない。
テレビでお馴染みの歌手だったが、実物を近くで見るともっと美しく可愛らしかった。私がこのように美人に生まれたら、全然違う人生を歩んでいただろう。
ヒット曲を数曲歌い、施設の子どもたち全員にサイン色紙を渡し、慰問は終わった。
その後、私は施設長の部屋に呼ばれた。施設長の部屋にはさっきの歌手とマネージャーらしき人がまだ残っていた。
「あなたが、愛流……?」
「そうですけど……」
どうして私の名前を知っているんだろう。施設の子どもの名前を全員覚えたのか。
「愛流、ごめんなさい。私があなたの母親なのよ」
愕然とした。今さら母を名乗る女性に出会えるとは思ってもみなかった。しかもまだ26歳のアイドルだ。
「あなたを生んだのは、私が14歳の時。当時極秘で付き合っていた大物タレントとの一夜の出来事だったの」
母が名を挙げたのは、今の時代でも根強い人気を誇るアーティストだった。
「彼には棄てられ、私は一人でどうしていいのか分からず……。愛流、あなたをここに置き去りにしてしまった。お願い。許して。これからは一緒に生きていきましょう」
そう言って母は私を抱きしめた。
「私はあなたの娘じゃない……。だって私はこんなに醜いんだもの」
「醜い? 愛琉が? あなたは私の子供時代とそっくりよ。私の母……あなたのおばあちゃんは外国人なの。お婆ちゃんによく似た大きな瞳や日本人離れした高い鼻。そしてふっくらとした唇とスラリとした手足やスタイル……」
母に引き取られた私は、母の勧めでボイストレーニングのレッスンを受けながら芸能界デビューをした。
メイクなどしたことなかったが、プロのメイクさんに丁寧に細かいところまでメイクしてもらうと、自分とは思えない美少女が鏡に映っていた。
「やっぱり外国人の血を引いている子は、メイクのやり甲斐があるわ。とても綺麗よ愛流ちゃん」
今日は初の音楽番組だ。観覧客も入っている。
緊張しながら、舞台に上がると、あちこちから声が上がった。「かわいいー!」と。
私はみにくいアヒルから、白鳥になれた。
ランキング参加中です。応援クリック頂けると嬉しいです。
にほんブログ村
にほんブログ村
一応、コメント1件もしくは拍手2つ以上が付いたら、
「読んでもらったもの」と判断して更新します。
なので拍手でいいので、拍手下さい(笑)
作者より
エロいのばかりでなく、いい話も書いてみました。
以前の職場(学習塾)の人でとても「濃い顔」の男性がいたのですが
中高生は「かっこいい~」とファンクラブまで作ってましたが
小学生は「キモイ」と言っていたことから
「日本人離れした顔を子どもはどう思うか」書いてみました。
ところで、このシリーズ、人気があるのかどうかイマイチ分からないんですよね…。
- 関連記事
-
- 大人のための「白雪姫」(1話完結) (2014/07/05)
- 大人のための「みにくいアヒルの子」(1話完結) (2014/07/02)
- 大人のための「アリとキリギリス」(1話完結) (2014/07/01)
もくじ 未分類
総もくじ ★短編集3~10話までの作品(完結)
総もくじ ★短編集11~30話までの作品(完結)
もくじ デス・フィアンセ~死神の婚約者
もくじ デス・フィアンセ2
もくじ 吟遊詩人 (SS/現在2話)
もくじ ★「ダメ子の鬱」2次創作
もくじ 詩のようなもの
もくじ バトン
もくじ 作者より
~ Comment ~
ヒデ王様
こんにちは。
そうそう、アヒルの中に1羽だけ白鳥の子が紛れ込んでいたんですね。
兄弟からも(育ての)親からも嫌われ、
住居を転々としたものの、やっぱり嫌われ…。
ところが実は白鳥でした!というお話でした。
その先はどうなんでしょうね。
本当はその先を描きたかったんですよ。
「センター(何の)に立たせてやるから、俺と寝ろ」みたいな
そっちに持っていくつもりが
やっぱり物語が長くなってしまい、ここで終わってしまいました(笑)
ありがとうございました!
そうそう、アヒルの中に1羽だけ白鳥の子が紛れ込んでいたんですね。
兄弟からも(育ての)親からも嫌われ、
住居を転々としたものの、やっぱり嫌われ…。
ところが実は白鳥でした!というお話でした。
その先はどうなんでしょうね。
本当はその先を描きたかったんですよ。
「センター(何の)に立たせてやるから、俺と寝ろ」みたいな
そっちに持っていくつもりが
やっぱり物語が長くなってしまい、ここで終わってしまいました(笑)
ありがとうございました!
勘太様
こんにちは。
コメントありがとうございます。
実は別のところにアップした分には、その後も書いているのですが
やっぱり、上に上がるには大物プロデューサーなどと関係を持たなくてはならず、
私はずっとみにくいアヒルの子のままなのか…というオチです(^_^;)
コメントありがとうございます。
実は別のところにアップした分には、その後も書いているのですが
やっぱり、上に上がるには大物プロデューサーなどと関係を持たなくてはならず、
私はずっとみにくいアヒルの子のままなのか…というオチです(^_^;)
NoTitle
いい女の魅力にはなかなか気づかないというものもありそうですよね
白鳥になって幸せになったのか、その先もちょっと気になりました
楽しかったですよ!
ではでは!